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揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制

大気汚染防止法の改正により揮発性有機化合物(VOC)の排出規制が始まる。 
H17年6月施行。ただしVOCの排出規制、届出及び測定の義務づけに係る規定の施行はH18年4月。既に該当するVOC排出施設を使用している場合はH18年4月末までに使用届を提出 。
●VOCとは
 ・揮発性有機化合物でVolatile Organic Compoundsの略
 ・大気汚染防止法第2条第4項「大気中に排出され又は飛散したときに気体である有機化合物」と定義
 ・代表的な物質としては、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどがあり、主なもので約200種類ある
 ・塗料用材(シンナー)、接着剤、インク、一部の洗浄剤等に含まれる
 ・固定発生源からは大気中に年間150万トン排出されている
 ・浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントの原因物質の一つ
●法律の主旨
大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除く)を「揮発性有機化合物(VOC)」として排出抑制を図る。工場・事業場に設置される施設で、VOCの排出量が多いためにその規制を行うことが特に必要なものを「揮発性有機化合物排出施設(VOC排出施設)」として排出規制の対象とする。 
・揮発性有機化合物排出施設の届出義務
・排出口からの排出濃度基準の遵守義務 ※既設の施設はH22年度まで対象外
・排出濃度の測定義務(測定は年2回、結果保存は3年)
●VOC(揮発性有機化合物)の主な定義
揮発性有機化合物は、常温において揮発して蒸気圧を有する有機化合物の総称であり、沸点により高揮発性有機化合物(VVOC:100℃以下)、揮発性有機化合物(VOC:100〜260℃)、準揮発性有機化合物(SVOC:260〜280℃)に分類される。大気汚染防止法では「大気中に気体状で排出される有機化合物」とされており、これは排出温度が高ければ比較的沸点が高い物質も対象になるとされている。また、その化合物そのものの摂取による毒性が問題になる「有害大気汚染物質」としてのVOC規制では、個別物質の濃度(μg/m3)を測定し評価されるのに対し、SPMや光化学オキシダントの原因物質としてのVOCは炭素換算(ppmC)で表示し評価され る。
規制及び届出の対象となる施設と排出基準
番号 対象施設 規模要件 排出基準
1 揮発性有機化合物を溶剤として使用する化学製品の製造の用に供する乾燥施設(揮発性有機化合物を蒸発させるためのものに限る。以下同じ。) 送風機の送風能力(送風機が設置されていない施設にあつては,排風機の排風能力。以下同じ。)
3,000m3/h以上のもの
600ppmC
2 塗装施設(吹付塗装を行うものに限る。) 排風機の排風能力
100,000m3/h以上のもの

 

自動車製造の用に供する塗装施設 既設700ppmC 
新設400ppmC
その他の塗装施設 700ppmC
3 塗装の用に供する乾燥施設(吹付塗装及び電着塗装に係るものを除く。) 送風機の送風能力
10,000m3/h以上のもの
木材・木製品の製造の用に供するもの 1,000ppmC
その他のもの 600ppmC
4 印刷回路用銅張積層板,粘着テープ若しくは粘着シート,はく離紙又は包装材料(合成樹脂を積層するものに限る。)の製造に係る接着の用に供する乾燥施設 送風機の送風能力
5,000m3/h以上のもの
1,400ppmC
5 接着の用に供する乾燥施設(前項に掲げるもの及び木材又は木製品(家具を含む。)の製造の用に供するものを除く。) 送風機の送風能力
15,000m3/h以上のもの
1,400ppmC
6 印刷の用に供する乾燥施設(オフセット輪転印刷に係るものに限る。) 送風機の送風能力
7,000m3/h以上のもの
400ppmC
7 印刷の用に供する乾燥施設(グラビア印刷に係るものに限る。) 送風機の送風能力
27,000m3/h以上のもの
700ppmC
8 工業の用に供する揮発性有機化合物による洗浄施設(当該洗浄施設において洗浄の用に供した揮発性有機化合物を蒸発させるための乾燥施設を含む。) 洗浄施設において揮発性有機化合物が空気に接する面の面積が5m2以上のもの 400ppmC
9 ガソリン,原油,ナフサその他の温度37.8度において蒸気圧が20キロパスカルを超える揮発性有機化合物の貯蔵タンク(密閉式及び浮屋根式(内部浮屋根式を含む。)のものを除く。) 容量が1,000KL以上のもの 60,000ppmC
※ppmCとは排出濃度を示す単位で、炭素換算の容量比百万分率。
注)「送風機の送風能力」、送風機が無い場合は排風機の排風能力を規模の指標とする。
注)「乾燥施設」はVOCを蒸発させるためのもの、「洗浄施設」はVOCを洗浄剤として用いるもの。
注)「乾燥施設」には「焼付施設」も含まれる。
対象設備の説明
-オフセット輪転印刷に係るものに限る-印刷の用に供する乾燥施設
(1) 「印刷」とは、原稿をもとに印刷版を作り、印刷機を用いて、インキを被印刷物に転移させる行為である。このうち、印刷後の、インキに溶剤として含まれるVOCを蒸発させるための乾燥施設が規制対象となる(次項についても同じ。)。
(2) VOCである溶剤(希釈剤を含む。)を含有しないインキ(使用時にVOC含有率1%以下のもの)のみを使用することが明らかな施設は、規制対象とはならない。紫外線硬化型インキ及び電子線硬化型インキは、これに該当することが多い。なお、一般に、水性インキは、VOCを含有しているので留意されたい(次項についても同じ。)。
(3)「オフセット印刷機」とは、印刷版の印刷インキをブランケット(表面がゴム層のシート)などの転写体に転移し、さらにこれを紙などに再転移する平版印刷方式の印刷機である。オフセット輪転印刷機は、現在の印刷機の主流であり、雑誌、ポスター、パンフレット、紙包装材料等の印刷に幅広く用いられている。
(4) 「輪転印刷機」とは、円筒状の印刷版を、円筒形の圧胴で押圧する構造の印刷機である。給紙装置が巻取式のものと枚葉式のものがある。
(5) 枚葉式のオフセット輪転印刷のうち、紙に印刷するものについては、一般に乾燥施設がないので規制対象にならないが、金属に印刷するものについては、乾燥施設があるので規制対象になり得る。
-グラビア印刷に係るものに限る-印刷の用に供する乾燥施設
(1)「グラビア印刷機」とは、写真製版又は機械彫刻による印刷版を用い、非画像部のインキをドクターブレードというナイフによってかき落として、くぼんだ画像部に残っているインキに印圧をかけてプラスチックフィルムや紙等に転移させる凹版印刷方式の印刷機である。食料品等のプラスチックフィルム包装材料の印刷(以下「軟包装グラビア」という。)をはじめ、紙器、建材、出版物等の印刷に用いられている。
(2) 軟包装グラビアによる印刷物を基材として、令別表第1の2の4の項に規定する「包装材料(合成樹脂を積層するものに限る。)」を製造することが多い。したがって、同一の工場内に、本項の施設と「包装材料(合成樹脂を積層するものに限る。)の製造に係る接着の用に供する乾燥施設」とが両方設置されている場合があるので留意されたい。
注)H17年6月大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について(通知)より  
詳細は関係省庁の公表資料でご確認下さい。

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