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「サビ」の雑学

 

サビない水

金属の腐食
湿食と乾食  
金属が使用環境で化学的あるいは電気化学的反応によって侵食される現象が腐食である。水分が関与する場合を湿食といい、水分が伴わない場合は乾食という、腐食はこの二つに大別される。湿食は水中、地中、あるいは大気中など比較的低温でみられ腐食の大部分をしめる。乾食は高温の空気あるいはガスによる酸化反応で、高温酸化とも呼ばれる。
腐食の電気化学的機構  
水中における金属の腐食は電気化学的反応に基づいて進行する。酸化反応(アノード反応)と同時に還元反応(カソード反応)を伴い.腐食が進行すると金属は金属イオンとなって溶液中に移行し、水素イオンは水素ガスあるいは溶存酸素によって水になる。
アノード:M →Mn++neー
カソード:2H+ +2eー→H2(酸性溶液、水素発生)
O2+4H++4eー →2H2O(酸性溶液、酸素還元)
O2+2H2O+4eー→4OHー(中性またはアルカリ性、酸素還元)
金属が腐食するにはアノードとカソード反応が金属表面で等しい速度で同時に起こる。
中性溶液中で鉄が腐食する反応式
アノード: 2Fe→2Fe2++4eー
カソード: O2+2H2O+4eー→4OHー
全反応:2Fe+O2+2H2O→ 2Fe(OH)2

この化合物に酸素および水の供給をうけて2Fe(OH)2+H2O+1/2O2→2Fe(OH)3赤さびとなる。さらに水和酸化鉄(FeOOH)またはFe2O3・nH2Oに変化する。このとき酸素が不足するとFe3O4・nH2O(黒さび)となり、実際の鉄のさびは表面が赤さび下地が黒さびの2層構造となっていることが多い。
腐食電池
異種電極電池 異種金属との接触、あるいは同一種類で組成比・組織・結晶方位が異なる等で金属表面において形成される腐食電池。
濃淡電池 腐食電池の中で最も多くみられる。同一金属が濃度の異なる同種の電解質溶液に別々に浸漬されたときに形成される電池。
1塩濃淡電池 / 溶液に濃度差があると、希薄溶液に接した箇所で腐食が起こる。
2通気差電池 / 同一濃度の溶液であっても溶存酸素量に差があると空気を含まない極がアノードとなって電流が溶液中に流出(腐食)する。例えばさびの真下は周辺部より酸素不足となり腐食される。また水面付近は大気からの酸素の供給が多くカソード部となるが、その下部は酸素が少なくアノード部となって腐食する。  金属の合わせ目、ボルトの下、ガスケット面および他の物質の付着面などでみられる隙間腐食(crevice corrosion)は、このような濃淡電池の形成による。酸素の少ない内部がアノードとなって腐食されるが、進行すると金属イオンや水素イオンが蓄積し塩濃度の増加とpHの低下により腐食は一層加速される。
温度差電池 温度変化によって生じる電位差よる電池。暖部がアノード冷部がカソードとなる。ボイラー、熱交換器、投込みヒーターなどで発生することがある。
標準電極電位  
金属の腐食傾向は腐食電池の起電力の大きさによって表すことができる。一般に標準水素電極を基準に各金属の標準電極電位を大きさの順にならべ電気化学列と言う。負の大きな値を卑あるいは電位が低い(あるいはイオン化傾向が大きい)、正の大きな値を貴あるいは電位が高い(イオン化傾向が小さい)と表現される。金属の基本的な腐食傾向がわかるが、実際の電位は環境と金属の表面状態で異なる。
異種金属の接触と腐食   
電極電位が異なる金属が接触しそれに電解質溶液が存在すると卑な金属が腐食される、異種金属接触腐食あるいはガルバニック腐食(galvanic corrosion)と呼ばれる。接触する金属の電位差が大きい程、さらに卑な金属に対する貴な金属の表面積が相対的に大きい程、影響は大い。  ステンレスと炭素鋼、銅と炭素鋼などの異種金属が接触している場合、いずれも炭素鋼単独の場合よりも腐食が加速される。加速される原因は酸素である、貴な金属がカソード反応の場を提供するので、それに見合ったアノード反応としての溶解が炭素鋼で起こる。 
脱成分腐食  
腐食により合金成分の特定元素が選択的に溶出する現象を、脱成分腐食または選択腐食と呼ぶ。このような腐食をうけた金属は、寸法変化は少ないが表面の変色、強度や延性の低下等が著しい。  水道用金具としてよく使われている銅亜鉛合金の真ちゅう腐食では、合金組成の亜鉛が溶出し脱亜鉛腐食と呼ばる。Au−AgおよびAu−Cuのような貴金属合金にも、分金といわれる脱成分腐食がみられ、Auより卑な金属が溶出する。
銅や亜鉛の腐食  
鉄以外の銅管や亜鉛めっき鋼管の腐食も要因は水中の溶存酸素である。銅は貴な金属で、本来、耐食性を有する金属であるが、しばしば温水中で孔食や潰食などのピンホールを生じることがある。孔食は地域や用途によって起こる場合と起こらない場合がありメカニズムはまだ明確になっているとは言えない。潰食は水流速が高い場合に銅管内面に馬蹄形の侵食を起こすがこれも電池作用が主体なのである。水流速が高いと酸化膜を破壊し裸になった銅の表面で電池作用による腐食が増大するのが原因である。 
機械的な腐食促進
応力腐食割れ  
引張り応力、残留応力が存在する金属材料が、その応力が材料の引張り強さ以下であっても腐食を伴って破壊されることがある。応力腐食割れと呼ばれる。応力腐食割れは電気化学的腐食と応力による機械的な破壊が交互に加って進行する。
腐食疲労  
腐食疲労は金属材料が腐食性の環境下で、引張り応力を繰返し、または交番応力を頻繁に受けた場合に生じる割れである。応力腐食割れの一種とも考えられている。
水素脆性  
酸洗やめっき工程を経た部品の折損、あるいは使用中の高張力鋼ボルトが僅かな腐食を伴って破損することがある。このような現象は水素脆性あるいは遅れ破壊とよばれ、硬さの高い鋼、油井鋼管のように弱酸性の硫化物を含む雰囲気などでも見られる。これらは工程中に金属材料に侵入した水素、あるいは腐食でカソード領域で発生した水素が原因となっていることが多く、割れは主として結晶粒内でおこる。
腐食摩耗  
腐食摩耗はエロージョン・コロージョンともいわれ、流動する液体中で発生する腐食損傷で、熱交換器の復水管などでみられ流動液体により金属表面の保護皮膜が物理的に取除かれて進行する。  キャビテーション・エロージョンとよばれている腐食は、ポンプローターやプロペラの背面、比較的流れの速い配管内など流速が急激に変化する箇所で発生する。
擦過腐食  
擦過腐食は、一方または両方が金属の接触面部で、ごくわずかな相対的運動で生じるすべりが存在する箇所でみられ、腐食生成物の大部分が金属酸化物であるのも特徴である。この腐食は、生じた酸化物および金属摩耗粉により促進される。軸受、振動機械、電気リレーの接点等にみられる。  
防食方法  
防食方法は環境処理、環境遮断、材料の選択、電気防食の四つに大別できる。耐食性、コストなどを考慮して使用条件に適合した防食方法を選択する。
環境処理  
電気製品や金属製品の輸送あるいは保管中の変色・腐食対策には、防湿包装材料を用いて、腐食要因の酸素と水分の透過量をコントロールする。また、ボイラー、プラントや自動車のラジエーターの冷却水には、水質管理の徹底、脱酸素あるいは腐食抑制剤(インヒビター)の添加による腐食の軽減が行われている。 
環境遮断  
各種金属のめっきや金属溶射のような金属被覆、塗装、アルミニウムの陽極酸化(アルマイト)、りん酸塩処理、ほうろう質又はガラス質による非金属被覆がある。
耐食材料  
金属材料の耐食性は使用環境によって変わるので、材料選定は種々の金属の実用事例などを参考にして行われている。材料の決定には、耐食性のほか、加工性、強度、入手の容易さ、および価格なども考慮される。
電気防食  
原理は電位−pH図で説明される自然腐食状態にある金属の電位を、不感域に移行させるの陰極防食と、不動態域に移行させる陽極防食がある。pHによっても不動態域に移行できる。電気防食は水中や土中の装置や施設に広く採用され、金属の電位を電流により変化させて腐食を防止する。 

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